|染色機について|
染料を用いて繊維を染色する方法を大別すると「浸染」と「捺染」に分類される。さらに「浸染」は、バッチ式染色法である「吸尽染色」と連続的に染色する「連続染色」に分類される。
一般に編物、バラ毛、糸、製品には吸尽染色法が用いられ、織物には連続染色法が用いられる。


吸尽染色
バラ毛や糸を染色する場合を「先染」、織物や編物のような反物を染色する場合を「後染」、そして縫製後の製品を染色する「製品染」がある。
以下に代表的な吸尽染色装置について説明する。


(1)ウインス染色機
ウインス染色機は染料溶液槽と布の回転軸からなる単純な構造の染色機械である。染浴内の染料溶液の攪拌は主としてリールの回転による力で動く布の移動で起こる溶液の移動によるため攪拌効率は低い。なおこの装置にポンプを付けて染料溶液の攪拌効率を高め均染性を向上させている装置もある。


(2)ジッガー染色機
布を広げた状態で染料溶液中にあるガイドローラーを通して染色槽両側上部にある2本のローラー間で布を交互に巻取りながら染色を行う装置である。ウインス染色機とは布がロープ状になる点と、一方方向へ布が回転する点が大きく異なる。
染浴が小さく被染物に対する染色溶液の割合が少ない低浴比染色が可能である。


(3)液流染色機
液流染色は別名ジェット染色ともいう。液流染色機は染色槽上部のポンプから強い流れの液が吹き出すジェットノズルがあり、このノズルからの噴流とともに布が搬送され染色される。
液流染色機はウインス染色機と比べて染浴内の攪拌効率もよく、さらには布にかかるタテ方向の張力が比較的弱くシワが同じ位置に固定される危険性が少ないため、ロープジワのない均一な染色物が得られやすい。また液量も少なくすることができるため低浴比染色が可能である。
液流染色機の例(サーキュラー)


(4)チーズ染色機
糸の孔を開いた同筒状の管に綾振り、均一の巻密度で巻いた糸の巻き物を「チーズ」という。
このチーズ内部の同筒管あるいはチーズ外部から染液を外側あるいは内側に向けてポンプで循環させて染色する方法がチーズ染色である。
チーズ染色機の例


(5)かせ染め染色機
糸をかせの状態で吊り下げながら染色する方法をかせ染めという。チーズのように糸が緻密な状態でなく、チーズ染色で問題となるような凝集物などのトラブルは少ない。反面糸が絡みやすい状態にあるため、糸自体を攪拌することはあまり好ましくなく、染液を噴射するなど染料との接触に工夫がなされている。
噴射式綛染め染色機の例


(6)パッケージ型染色機
糸やバラ毛、わた状の被染物を染色する場合にはパッケージ型の染色機が用いられる。
パッケージ型染色機の中ではオーバーマイヤー社の染色機が有名であり、パッケージ型染色機を別名「オーバーマイヤー染色機」と呼ぶこともある。
オーバーマイヤー染色機は染色液を上部からシャワー方式で注ぎ、被染物を通過し、染色容器の下部に集まった染色液をポンプを用いて再び染色に供する方式と染色槽の中にある多孔性の円筒に被染物を加圧しながら詰込み、その内層から外層へまたはその逆方向に染色液を強制貫流させながら加熱、染色する方法がある。


連続染色
連続染色法は染色工程の合理化、量産化の一手段として綿織物、ポリエステル織物、編物などの染色を中心に工業化が進んだ染色方法である。連続染色法の工程は染料や必要に応じて染色助剤が投入されている染色浴中に長い帯状の乾燥した繊維を浸漬し、染料の付与、予備乾燥、発色、洗浄の各工程からなり工程の最初から最後までのすべての工程を一貫して行う染色方法である。
被染物の浸漬、染着処理工程、および洗浄工程までの装置を合理的に配置することによりすべての染色工程が連続的に行えることから「連続染色」の名称がある。インジゴの染色は糸をロープ状にしてこの連続染色法で行われる。
連続染色工程の例
連続染色方式は大量の繊維の染色加工に適しており一方吸尽染色方式は色替などの操作が比較的容易であることから小ロットの染色加工の適している。