|素材について|
(1)綿
最も代表的な天然セルロース繊維で、主成分はセルロースが約90%である。綿繊維は1本1本に天然の撚りがあるため、弾力性に富み柔らかく肌ざわりが良い。中空部に含まれる空気によって保温機能を有し、水分の吸収もよい。さらに染色性や吸湿性,耐熱性もよい。しかし、品種や産地によって繊維の長さ、太さ、光沢、色などが異なる。米綿、エジプト綿、ペルー綿、中国綿などがある。
セルロースの構造


(2)麻
主に衣料として用いられるのは、亜麻、ラミー、大麻である。主成分は綿と同じくセルロースであるが、その比率は約65〜80%と綿よりは低い。綿と比べて酸やアルカリに影響されやすいので、加工においても麻を使用した製品はハードな加工にはむいていない。


(3)ビスコースレーヨン
いわゆるレーヨンで、パルプを原料として製造されている。
吸湿性、染色性はよいが、強力は小さく特に湿潤時の強力低下が大きいので加工においても注意を要する。一般にデメリットも多く決して汎用繊維とはいえないが、他にはない外観や風合のよさなどの長所を生かした用途もあり、特に最近はデメリットを他の素材との複合で補ったり、加工方法の進歩で婦人アウターの分野でも使用されている。


(4)銅アンモニアレーヨン
略称キュプラ又はベンベルグと呼ばれている。
原料はコットンリンターを用いられている。製造コストが比較的高くつくため、日本では旭化成しか製造していない。キュプラの単繊維はレーヨンよりも細く光沢があり、薄手の高級織物に多用されている。


(5)ポリノジックレーヨン
ポリノジックはよりコットンに近づけようとしてレーヨンの重合度を高めて製造された繊維である。そのためレーヨンよりも引張強度は強く、伸度は低く、断面は円形で、レーヨンよりもコシの強い繊維である。


(6)テンセル、リヨセル
物性的にはポリノジックとよく似ているが、繊維を紡糸する時にアミンオキサイドという溶剤で行う。このアミンオキサイドは回収されて廃液を出さないので、エコロジー繊維と言われている。テンセルをバイオ加工すると、繊維の中心部より発生するフィブリル化がピーチスキンのようになり、あの独特の風合になると考えられている。


(7)ウール
ケラチンというタンパク質で構成されており、繊維本体のコルテックスがキューティクルと呼ばれるウロコ状の細胞で覆われた構造である。ウールは保温性、染色性がよく、また洗濯、日光などによる退色に対して堅牢であることなど、衣料原料として理想的な長所を持っている。
ウール以外の毛繊維として山羊の毛であるカシミヤ、アンゴラ山羊の毛のモヘヤー、アンデス山脈に生育する山羊の毛であるアルパカなどがある。


(8)シルク
2本のフイブロインとその表面を包んでいるセリシンという2種類のタンパク質で構成されている。シルクとして使用する場合は、表面のセリシンを溶かして取り除く。この処理を精錬といい、精錬したシルクは銀白色で半透明の美しい光沢がでる。


(9)アセテート
セルロースを酢酸セルロースに変えた後、これを再生したもの。
酢化の程度によって、トリアセテートとジアセテートに大別される。
アセテート繊維は再生セルロース繊維と同じく、適度な吸湿性を有し、風合、光沢などもよい。服地、裏地、カーテン地、洋傘、タバコのフィルターなどに用いられている。


(10)ナイロン
アミド結合(−NHCO−)で結ばれた高分子化合物の中で、脂肪族ポリアミドをナイロンという。ちなみに芳香族ポリアミドはポリアラミドと呼ばれ、ケブラーなどがこれに属する。
ナイロンは天然繊維と比べて吸湿性が低く、強度が高く、熱可塑性である。風合は絹に似ているが、光沢、肌触りは絹より劣る。


(11)ポリエステル
テレフタル酸メチルエステルとエチレングリコールとのエステル交換重合により得られる。
1940年代初めに英国で開発され、1950年に企業化し、今日では世界で最も多量に製造されている合成繊維である。
現在では極細繊維の技術開発により、人口スウェードや、高密度織物への用途展開も行われている。産業用としても、ホース、ベルト、ロープなどに幅広く使用されている。